メンテナンスと予防保全
油圧の保全と予防
油圧装置にかかわらず、機械装置は経年の劣化を避けることは出来ません。
故障や不具合の発生時に素早く復旧をする、不具合の発生を出来るだけ早く察知することは装置全体の信頼性を高め安定した装置の運用につながります。
『 油圧作動油 』
油圧の力を伝える媒体である作動油は最も基本的な要素であり、油圧装置のトラブルの原因にも大きく関係が有ります。
作動油の保守管理を行うことはトラブル対策の最も根幹に関わります。
・使用温度の管理
多くの油圧機器はおおよそ60℃までで使用するように取扱説明にに記載があります。
高い油温で使用し続けることは、油自体の劣化にもつながりますし、
油の粘度が適正値より低いままで使用し続けるとポンプなどの機器内で潤滑不良が起きて
異常摩耗や焼き付きを引き起こす原因になります。
また、ニトリルゴムなどのパッキン関係の劣化を早め油漏れ等のトラブルにもつながります。
高圧で使用する装置などは油温が上昇しやすい為、使用条件にもよりますが対応を取る事が必要です。
オイルクーラ・オイルヒータ等と制御機器を利用し、適正な温度範囲となるように温度を管理する。
油温が上昇しにくい運転方法とする省エネ型油圧ユニットを使用し油温の上昇を抑える等が対策となります。
・コンタミネーション(油中の汚染物質)の管理
油圧装置を運転し続けると、必ず作動油内に数ミクロン程度の汚染粒子が混入します。
汚染粒子は、ポンプやバルブなどの機器内の摺動面やベアリング等に摩耗を起こし、
機器の動作不良・圧力の不安定化や圧力低下など致命的な不具合につながる可能性が大きく
通常最もトラブルの原因となりうる要素です。
適正なフィルタ、ろ過装置の使用やフィルタのつまり具合・汚染度の管理をする事が
油圧装置の信頼性を高めるうえで非常に重要な要素となります。
・水分の混入
作動油内への水分の混入は、作動油の添加物と反応をし、劣化を進めたり、機器の錆にもつながります。
水分が多く混入した場合、作動油は乳化し白っぽい状態になります。
作動油が白濁した場合はしばらく経過観察をし、
白濁が抜けなければ水分混入・抜けてくれば空気の混入 であることが大半です。
・配管からの油漏れの管理
配管部からの漏れ、空気の回路内への混入も当然機器へダメージを与える可能性が高くなります。
漏れ続けた場合、周囲を汚染するだけではなく、タンク内の油量が少なくなって
ポンプよりエアーを吸うようになってしまうとポンプが破損してしまいます。
配管自体での工夫は当然ですが、油面を検知するレベルスイッチを設けるなど、
漏れを検知しやすい対策を取る事が重要です。
『 据付 』
油圧ユニット・装置の設置環境を考慮せずに運用した場合、すぐにトラブルを起こす可能性があります。
・屋内・屋外
通常は工場などの屋内に設置することが大半であり、それを前提として製作されている事が多いのですが、
使用目的や現場の状況によっては屋外に近いような環境での使用となる事もあります。
機器が屋外対応となっているもの(屋外用電動機など)となっているか、
また直射日光や雨水を防ぐようなカバー・塗装・結線部の保護 等が必要です。
・屋内設置時の熱対策
熱発生を少しでも放散させるため、できるだけ通風の良い場所に設置する事が必要です。
壁際ぎりぎり等に設置すると、放熱の邪魔をし、メンテナンスの際の作業スペースも無くなってしまう為
できるだけ壁際ではなく0.5~1m程度のスペースを設けるようにしましょう。
・ゴミ・防塵対策
設置している周囲の雰囲気に粉塵等が多い場合、油圧装置に付着して問題を起こす可能性があります。
タンク内の作動油に粉塵が混入した場合、使用機器の劣化を早めますし、フィルターなどのろ過機器のエレメントが
すぐに目詰まりを起こしてしまう事があります。また、空冷式のラジエータ等の冷却装置に付着した場合
冷却能力を低下させてしまい、本来の能力が出ない為油温の上昇につながる可能性があります。
雰囲気より粉塵を取り除くようにする、油圧ユニット自体を防塵カバーで覆うなどの対策が必要な場合があります。
防塵カバーはモーター等の熱発生源を覆う為、熱の放散が問題ないかも考慮する必要があります。
・騒音・振動対策
油圧ユニットからは騒音や振動がどうしても発生してしまいます。
人・オペレータの作業する場所と、ユニットが離れていれば音は減衰しますが、どうしても離せない、
または設置環境上、騒音値を下げる必要がある場合は ユニット自体を防音材を設置したカバーで覆ったり
防振緩衝材をユニット機内や据付地面との間に設置するなどの対策をとる必要があります。
防音カバーについては防塵と同じく熱がこもらないように考慮する必要があります。